“推し”が性加害…裏切られたファンは何を思う? 映画『成功したオタク』徹底考察&評価。推し活ブームに一石を投じる衝撃作
text by 寺島武志
現在公開中の映画『成功したオタク』は、ある日突然“推し”のアイドルが犯罪者になってしまったファンの女性が、自らの経験やアイドルを応援していたファンに取材して作り上げたドキュメンタリー映画だ。「思い出を汚された」ファンは何を思うのか、本作の本質に迫る。【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】(文:寺島武志)
もし突然自分が「犯罪者のファン」になってしまったら?
ある日「推し」のアイドルが犯罪者になる。しかもその犯罪とは性加害だった…。
本作は、韓国の女性監督オ・セヨンが自身の経験を基に、アイドルの「推し活」をしていたものの、裏切られたファンの声を余すところなく拾い上げたドキュメンタリー作品だ。
セヨン自身、K-POPスターのチョン・ジュニョンの熱狂的ファンで、その結果、テレビ共演も果たした「성덕(ソンドク)=成功したオタク」だった。
この言葉、ファンとして世間に認知され、推し活が高じて、好きなタレントに実際に会ったことのある人を指す言葉で、並大抵のことでは、そうとは呼ばれないほどの、一握りのファンだ。ファン層にカーストがあるとすれば、その頂点にいる存在といっていいだろう。
しかし突然、「犯罪者のファン」になってしまった彼女は混乱し、苦悩し、葛藤する。そして、同じ思いをしている仲間を気に掛ける。