裏切られたファンたちの赤裸々な声
セヨンは、同じように推しによる犯罪によって裏切られた感情を持つファンに、次々とインタビューしていく。本作のほとんどの時間を彼女たちの言葉で紡ぎ、さらにセヨン自身のモノローグでもある。
その“失敗したオタク”たちは、口々に語り出す。
「思い出を汚された」「一生刑務所から出てこないでほしい」「私たちは直接的な被害者ではないけれど、二次的な被害者」「(性犯罪者用の)電子足環をつけて暮らしてほしい」
そして、ついには「死んでしまえ」と言い放つ者まで現れる。“可愛さ余って憎さ百倍”といたところか。
一方で、「私の思い出はきれいなまま」と振り返る冷静なファンもおり、さらには推しのタレントが逮捕された後も、陰ながら応援しているファンもいた。
こうした二項対立した声をきちんと拾い上げているところに、セヨンの映画監督としての気概が感じ取れる。
自分の心と相反する言葉を作中に描くことは、葛藤との闘いでもある苦しい作業だ。かといって、罪を犯したアイドルを非難する方向に振り切ってしまえば楽なのだろうが、セヨンは、それを良しとはしなかったのだ。