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もし自分の推しが罪を犯した時、正しく怒れるか

『成功したオタク』
例えば、とある女性は、罪を犯した推しのタレントを擁護するファンについて「社会悪に手を貸すのか、哀れむなんて最悪なこと」と怒りを露わにする。当然と言えば当然の感情だ。

しかし、好きだった相手に怒りの感情を持ち続けることは苦しいことだ。実際、「死んでしまえ」と吐き捨てた女性は、時間の経過とともに「もう怒りも感じない」と変化している。もちろん許したわけではないだろうが、興味を失ったということだろう。人間の脳とは都合よくできているものだ。

とはいえ、本作を観賞していると、もし自分の推しや、自分の身近な人の推しが罪を犯した時、正しく怒りを感じることができるか自信が持てなくなる。怒る人の気持ちには寄り添いたいが、怒れない人に対して説教などできようか…。

一方で、推しが犯した罪自体を「許す」のもどうかとも感じる。

推しの罪を認めない、あるいは矮小化することは、二次加害にもなり得る。セヨン自身も当初は推しに関するスキャンダル報道を認めず、事件を報じた記者に怒りを覚えていたのだ。

しかし、その記者と会って話した後、セヨンはその流れで朴槿恵元大統領を支持する人々の集会に参加することになる。

朴氏は、2016年の「崔順実ゲート事件」で、韓国の民主化以降、史上初めて弾劾で罷免された大統領であり、2017年に逮捕され、懲役24年、罰金180億ウォンの有罪判決を受けていた。

しかし、デモの参加者は、朴氏の無実を信じている。傍から見て妄信的なような光景だが、彼らは毎週200~300通の激励の手紙を朴氏に届けていた。

その雰囲気に圧倒されたのか、セヨンも服役中の朴氏に手紙を書く。書きながらセヨンは「ファンレターのようだ」と語る。同時に彼女は、未だに推しを応援しているファンへのインタビューはしないことを決意する。

ここからのセヨンの心の動きは、鑑賞者が想像するしかない。

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