マリリン・モンローの魔力ー配役の魅力
本作の演技の注目ポイントといえば、まず挙げるべきはトニー・カーティスとジャック・レモンの女装演技だろう。カーティスは、「ハリウッド最後の二枚目俳優」という自らのイメージを崩し、コメディアンとしての才能を開花。アメリカを代表する喜劇俳優であるレモンとの息のあった演技で観客を楽しませてくれる。
そして、何より忘れてはならないのが、シュガー役のマリリン・モンローだ。ワイルダーとのタッグは、1954年の『七年目の浮気』以来となるが、本作では、持ち前の色気に加え、前作を上回る無類のコメディエンヌぶりを発揮。彼女のフィルモグラフィを代表する作品になったのはいうまでもない。
なお、ワイルダーによれば、当時、モンローはすでに大量の睡眠薬を常用しており、現場ではNGを連発し、スタッフにも当たり散らすなどやりたい放題で、ワイルダー自身、前作『七年目の浮気』の際も「二度とマリリンとは仕事をしない」と心に決めていたのだとか。
また、ギャングの頭目であるスパッツ・コロンボを演じるジョージ・ラフトは、ギャング映画ではおなじみの俳優。ギャング映画のパロディ作品にあえて本家のキャストを配置するあたりに、ワイルダーのキャスティングのセンスが光っている。