音楽映画としての『お熱いのがお好き』ー音楽の魅力
本作の音楽といえば、なによりモンローが歌う「愛されたいのに」を挙げなければならない。
「ププッピドゥ」という魅力的なスキャットとシンプルなメロディ、そして「好きな人から愛されたい」という直球の歌詞が印象的なこの曲は、まさに“セックスシンボル”としてのモンローにぴったりで、モンローのイメージを代表する象徴的な歌となったのもうなずける。
しかし、本作の魅力は、モンローの歌声だけではない。コンサートを舞台とした作品らしく、音楽がじつに効果的に使われている。
例えば、シュガーとジョーが熱いキスを交わすシーンとジェリーとオズグッド3世がタンゴを踊るシーンがカットバックで流れるシークエンスでは、前者で甘いバラードが、後者でリズミカルなタンゴの名曲『ラ・クンパルシータ』が流れる。死んだ目でステップを重ねるジェリーの顔が観客の笑いを誘うこと請け合いだ。
なお、この『ラ・クンパルシータ』のテーマは、その後ジェリーが登場するたび、バラードに混ざって流れるほか、ラスト、シュガーとジョー、ジェリーがオズグッド3世のヨットで脱出するシーンでは、オズグッド3世の「完全な人はいない」の名セリフのあと、いきなり流れ、ブラスセクションの締めの音に合わせて「THE END」というテロップが表示される。
本作が持っているコメディ映画特有のテンポの良さは、音楽の使い方のうまさによるところが多分に大きいと言えるだろう。
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