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観客を相手取ったコンゲームの痛快さ―脚本の魅力

コンドーフ役のポール・ニューマン【Getty Images】
コンドーフ役のポールニューマンGetty Images

本作の最大の見どころ。それは、ラストに待ち受ける大どんでん返しにある。一般的に、信用詐欺を扱ったコンゲーム映画は大どんでん返しが作品の中心に置かれることが多いが、本作の場合は「観客をも騙している」点で他の作品と一線を画している。

一般的に、映画の観客は、作中のキャラクターの行動を神の視点から見ているためスクリーンに映っている情報がすべてであると盲目的に信用してしまいがちだ。しかし本作では、この錯覚を逆手に取り、キャラクターにしか分からない情報を紛れ込ませることで最後の最後で観客を騙す。つまり本作は、作品自体が映画という仕組みを利用したコンゲームになっているのだ。

なお、脚本家のウォードは、映画のリサーチとしてスリを調べている間に、本作の抗争を思いついたとのこと。1930年代から40年代にかけて活躍した詐欺師たちが、金持ちから大金を巻き上げるために賭博場や偽の証券取引所を作っていたというエピソードに魅了されたウォードは、1年がかりで脚本を書き上げ、プロデューサーに持ち込んだという。

本作で長編デビュー作にしてアカデミー賞を受賞したウォード。本作がコンゲーム映画の傑作となったのは、ウォードの巧妙かつ緻密なシナリオがあってこそだろう。

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