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1930年代の雰囲気を忠実に再現したビジュアル―映像の魅力

フッカー役のロバート・レッドフォード【Getty Images】
フッカー役のロバートレッドフォードGetty Images

あらすじからも分かるように、本作は本来フィルムノワール(犯罪映画)であり、厳密にはコメディではない。しかし、それでもどことなく明るくユーモラスに感じられるのは、カメラワークや美術によるところが大きい。

例えばオープニングでは、テーマ曲をバックにキャラクターを描いた挿絵が表示され、それをめくることで物語が展開していく。また、物語の合間合間にも挿絵が挟まれ、章立てで物語が展開していく。こういった表現を取り入れることで、本作を絵本やおとぎ話のように楽しむことができるのだ。

また、随所にちりばめられた小洒落たエフェクトにも注目だ。例えばラストシーン。すべての仕事を終えたフッカーとゴンドーフが肩を並べて去っていくショットでは、画面の端から円形に暗転していくアイリスアウトというトランジション(場面転換)が用いられている。本作では、こういった古典的なエフェクトを多用することで、1930年代のサイレント映画のような印象を観客に与えることに成功している。

また、美術監督のヘンリー・バムステッドは、1930年代の人気雑誌『サタデー・ウイニング・ポスト』を模倣したタイトル(イラストレーターのヤロスラフ・ゲブルがデザイン)や、1930年代当時に用いられたユニバーサル社のロゴなど、意匠も1930年代のスタイルを踏襲。さらに、作品全体のシックなカラーやトーン、そしてどこか街並みのセットも当時の風俗や犯罪映画のムードを忠実に再現しており、作品世界の構築に一役買っている。

なお、本作のセットは、その後『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズで使いまわされている。どこで使われているかは実際に見て確認してほしい。

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