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普遍的なテーマと心の機微を繊細に描く~脚本の魅力~

『東京物語』の英語版ポスター
東京物語の英語版ポスターGetty Images

“家族の崩壊”、“老後の孤独”といったいつの時代にも通じる普遍的なモチーフに加え、第二次世界大戦で戦死した次男の不在が家族のあり方に深い影響を与えており、“戦争の影”もそこはかとなく強調されている。日々の生活にまつわるミクロな問題を丁寧に描きつつ、歴史的な出来事を背景に敷いてマクロな視点で人間関係を捉えることで、物語は奥行きと強靭なリアリティを獲得している。一見しただけでは起伏の乏しい物語に思えるかもしれない。しかし、よく見ると登場人物一人ひとりの心の機微を繊細に描いた、上質なファミリードラマであることがわかるだろう。

年老いた両親をぞんざいに扱う子供たちも決して鬼ではなく、それぞれの流儀で父母を愛していることがふとしたセリフでしっかり表現されているのだ。それによって観客は登場人物を一面的にではなく多面的に把握し、親しみのこもった眼差しを向けることが可能となる。鑑賞するたびに異なる味わいを見せる、一部の隙もない見事な脚本だと言えるだろう。

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