ギャレス・エドワーズの復活劇
本作の魅力として、ユニークなビジュアルにも目を見張る。オレンジの僧侶の衣装を来たAI(模造人間)や、水田や畑で働くロボットなど、東南アジアの景色とSF的なテクノロジーのレイヤーが重なるルックは、東欧の田園とロボットを描いたヤクブ・ロザルスキーや日常の中の幻想的なテクノロジーを描いたシモン・ストーレンハーグといった近年のアーティストが手がけた作品を想起する。
これらはギャレス・エドワーズのイメージと本作のプロダクション・デザイナーであるジェームス・クライン(『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』など)の仕事によるところが大きく、その洗練されたデザインとビジュアルは本作を上質なSF映画へと高めている。このあたりはギャレス・エドワーズの優れた映画的ビジュアルセンスが確かであることの証しでもある。
さて、映画ファンなら本作の一番の関心ポイントは、SF映画でも渡辺謙でもなく、そのギャレス・エドワーズ監督作、ということに尽きるだろう。
ビッグバジェットで制作されるのが一般的である怪獣映画を、低予算ながら卓越したセンスで描いた『モンスターズ 地球外生命体』(2011)を皮切りに、ゴジラに見栄を切らせる日本的様式美に驚かされた『GODZILLA ゴジラ』(2014)を監督。
そして遂にはスター・ウォーズのスピンオフ『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)の監督の抜擢と、デビュー作から5年で瞬く間に監督としてのステップアップを果たしたギャレス・エドワーズ。
しかし『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』では製作途中でトニー・ギルロイが再撮影に参加するなど、撮影はかなり難航したことが窺える。
思い返せば、『ローグ・ワン~』でのクライマックス、反乱軍の部隊の装備は半袖にジャケットを着こんだ兵士や、あご紐を締めずにヘルメットを被った兵士(ちなみにあご紐を締めないのはだらしないからではなく、爆風によって首の骨が折れるのを防ぐため)など、あきらかにベトナム戦争をイメージしたルックであった。
また帝国軍の四足歩行のAT-ATウォーカーが南国風の木々をなぎ倒して登場するシーンなども『ザ・クリエイター/創造者』でのアメリカ軍の巨大戦車の登場シーンと重なってくる。
ついでに言えば、デス・スターとノマドという、これまた敵の兵器としては同じ役割をもった兵器が登場する。ギャレス・エドワーズはスター・ウォーズの世界にベトナム戦争のようなルックを持ち込もうとして上手くいかなかったが、6年の時を経て、ようやくそのイマジネーションを充分に発揮した。
そう考えると、なんとなく本作はギャレス・エドワーズ復活劇というようにも見えてくるのである。