“現在進行形”のアフガニスタンの政情を描く
アフガニスタン紛争はアルカイダのトップ、オサマ・ビンラディンの殺害により、一応の決着を見た。しかしながら、2021年に米軍がアフガニスタンから全面撤退したタイミングでタリバンは全土を掌握。再び政権を握った。これにより、200人とも300万人ともいわれる難民が発生している。
同作はあくまで、16年前の韓国人人質事件にフォーカスして、物語が進められているが、実際は“現在進行形”といっても過言ではない。
ストーリーとしては、人質事件を巡り、国家同士の外交と、それに携わる人々の物語をテンポ良く描いており、さらに、ファン・ジョンミンやヒョンビンといったトップ俳優の演技はもちろん、ヒョンビンのアクションも見どころの一つであり、ただただ重いムードで進むことなく、観衆を楽しませようとしている姿勢が見て取れる。さらに韓国政府側、タリバン政権側のキャストの演技によって、より切迫した雰囲気が伝わってくる。
日本でこのようなことが起きるとすぐに“自己責任論”が飛び交うが、本作で人質となってしまう「エホバ教」の信者たちは、あくまでも平和的に布教活動を行っていたはずであり、その責を負わせることはあまりに酷だろう。
過去を振り返りながらも、現在のアフガニスタンの政情にも思いを馳せるような作品だ。
(文・寺島武志)
【作品情報】
監督:イム・スルレ
出演:ファン・ジョンミン『哭声/コクソン』、ヒョンビン「愛の不時着」、カン・ギヨン
「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」
原題:교섭/英題:The Point Men/109分/韓国/カラー/シネスコ/5.1CH デジタル/字幕翻訳:根本理恵 PG12
配給:ギャガ
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