日本が誇る名優の監督作は詰め込み過ぎて意味不明…?
役所広司『ガマの油』(2009年)
監督:役所広司
原案:役所広司、中田秀子
脚本:うらら
キャスト:役所広司、瑛太、二階堂ふみ、澤屋敷純一、八千草薫、益岡徹、小林聡美、柄本時生
【作品内容】
デイトレーダーの矢沢拓郎は、妻の輝美、息子の拓也と幸せな日々を送っていたが、ある日拓也が交通事故で意識不明の重体に陥ってしまう。事故を知らない拓也の恋人・光の電話に出た拓郎は、本当のことを言えないまま、思わず拓也のふりをするが…。
【注目ポイント】
ハリウッドデビューも果たした名優・役所広司が監督したロードムービー。拓也役を瑛太、輝美役を小林聡美、光役を二階堂ふみが演じており、二階堂は本作が実質的なデビュー作となる。
本作の難点は、「詰め込み過ぎてテーマが曖昧」ということに尽きる。本作のテーマは、拓郎たちが拓也の死を受け入れる過程にあるはずだが、拓郎と拓也の親友だった秋葉サブローが森の中で熊と格闘するエピソードを挟んだり、途中で拓郎が子どもの頃に見たガマの油売りの夫婦を登場させたり、無駄に笑わせようとしてくる。
しかし、そのくせ本作では拓郎たちの心理など肝心なところが描かれない。加えて、拓也とサブローが親友になったいきさつや、サブローが少年院に入ったいきさつ、なぜ拓也が宇宙飛行士になりたかったのかなどは最後まで謎のままだ。
本作の上映時間は131分と比較的な長いが、蛇足なシーンが多く、長い上映時間がさらに長く感じられる。初監督作品にありがちな失敗といえるだろう。