名評論家の映画愛にあふれた”究極のB級映画”
水野晴郎『シベリア超特急』(1996)
原題:Siberian Express
監督・原作・脚本・製作:MIKE MIZNO(水野晴郎)
プロデューサー:安藤庄平、西田和晃
キャスト:水野晴郎、かたせ梨乃、菊池孝典、西田和晃、アガタ・モレシャン
【作品内容】
太平洋戦争前夜の1938年。モスクワー満州間を運行するシベリア鉄道でソ連軍のポロノスキー大佐の殺人事件が発生し、契丹人女性の李蘭とウイグル人女性のカノンバートルが姿を消す。列車に乗り合わせた佐伯大尉と青山一等書記官は犯人探しに乗り出すが、今度はドイツ軍ナチのユンゲルス中佐が殺害され―。
【注目ポイント】
本作は、「金曜ロードショー」(日本テレビ系列)の司会で知られた映画評論家の水野晴郎が、「MIKE MIZNO(マイク・ミズノ)」名義で監督した作品。監督のほか、脚本・製作・主演も水野自身が担当し、映画で5作、舞台で2作の計7作品が制作された。
日本ユナイト映画の宣伝総支配人を務め、映画評論界で名を馳せた水野氏だが、自らポケットマネーを投じた本作は素人同然の出来。役者の棒読み演技や論理性をガン無視した謎解きなど、おバカ映画にありがちな要素が散見される。
とはいえ、本作に見どころがないわけではない。随所にヒッチコックの『バルカン超特急』をはじめとした名画の引用が散見されるほか、何とか面白い作品にしようとする水野の気概が伝わってくる。また、ラストではとある仕掛けが発覚し、本作が水野自身の反戦メッセージを反映した映画であったことが語られる。
一部では「究極のB級映画」とされ、カルト的な人気を誇る本作。本作からは、映画をこよなく愛した水野のリスペクトがひしひしと感じられる。
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