多くの謎が残る海洋での失踪事件がモデル
『オープン・ウォーター』(2004年)
上映時間:79 分
原題:Open Water
製作国:アメリカ
監督:クリス・ケンティス
脚本:クリス・ケンティス
キャスト:ブランチャード・ライアン、ダニエル・トラヴィス、ソウル・スタイン、エステル・ラウ、マイケル・E・ウィリアムソン
【あらすじ】
カリブ海へと旅行にやってきたダニエル&スーザン夫婦は、船でダイビングスポットへと訪れる。美しい海に夢中になっているダニエルとスーザンは、他の客達が船に戻っていくことに気付かない。夫婦が海面へと戻った頃には、あたりに船は見当たらず…。
CGなどを使わず低予算ながら世界で大ヒットした本作は、実際にサメが泳ぐ海の中で撮影されている。
【注目ポイント】
本作は、1998年にオーストラリアで起きた事件が基となっている。
モデルとなったトムとアイリーンのロナーガン夫婦は、オーストラリアのクイーンズランド州沿岸にあるグレートバリアリーを遊泳中に消息を絶ったという。その後1週間に渡って捜索が行われたものの、2人の遺体は発見されない。
失踪から数週間経ち、2人が装着していたとされるスキューバダイビング装備の破片が見つかった。それを調べると、2人はどうやらサメではなくサンゴによって損傷した可能性が高いことがわかった。
また、2004年にニューヨークタイムズが報じたところによると、夫のトムが自身の日記に自殺願望を書き込んでいたという。そのことから、トムが妻のアイリーンを殺した上で、自殺を図ったのではないかという憶測も飛び交った。
なお、アイリーンの父、ジョン・ヘインズは、2人は脱水症状によって混乱しダイビングスーツを脱ぎ捨てて溺死したのだと考えているという。
本作では、広大な海に2人ぼっちで取り残される恐怖を描いている。日が暮れるにつれて低くなる水温と凍える身体、周囲の状況が把握できず、いつサメに襲われてしまうかわからない怖さ…。スピルバーグ『ジョーズ』のような派手な怖さはないものの、「まわりがよく見えない」という曖昧な状況が精神的恐怖をかき立てる。
実話を踏まえてみると、さらに恐怖が増す一作だ。