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主人公ターのモデルはSF映画の巨匠…? 『TAR』を“非ナチ化とSNS告発“の観点で考察&解説【映画と本のモンタージュ】

映画から受け取った感動をまったく別の体験に繋げることで、人生はより豊かになる。本コラムでは、ライターでブックレビュアーのすずきたけしさんが、話題の映画のレビューと共に、併せて読むことで作品理解が深まる本を紹介。“本のプロ”の視点から映画と書籍を繋げることで、双方の魅力を引き出す。今回は、映画『TAR ター』を考察。(文・すずきたけし)

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【著者・すずきたけし プロフィール】

ライター。『本の雑誌』、文春オンライン、ダ・ヴィンチweb、リアルサウンドブックにブックレビューやインタビューを寄稿。元書店員。書店と併設のミニシアターの運営などを経て現在に至る。

重層的で多様な見方ができる傑作

© 2022 FOCUS FEATURES LLC

アメリカの五大オーケストラで指揮者を務め、ベルリン・フィルの首席指揮者として活躍する才人リディア・ター(ケイト・ブランシェット)。

映画『TAR ター』はクラシック音楽の世界を描きながら、エキセントリックなリディアの言葉、行動、心理を通じて、現代のセンシティブな精神性や社会のなかにある腫れものを突いてくる刺激的な作品だった。

リディアはその多彩なキャリアと指揮者として名実ともに絶頂を迎えていたが、独善的な行動がエスカレートし、やがて過去の自分の行いにより精神を蝕まれていく。

心理サスペンスやサイコホラーとも受け取れる本作ではあるが、そこには組織や権威による権力行使のありようや、SNSによる告発の時代などが描かれ、重層的で多様な見方ができる作品でもある。

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