映画『TAR ター』とあわせて読みたい一冊
『2001 キューブリック クラーク』(早川書房)
マイケル・ベンソン[著]、中村融・内田昌之・小野田和子[訳]
添野知生[監修]
音楽の世界ではないが、総合芸術である映画のタクトをふるうスタンリー・キューブリックには、リディア・ターが持つ強かさと脅迫的なクリエイティビティを重ねずにはいられない。
映画『2001年宇宙の旅』の監督であるキューブリックと原作者のアーサー・C・クラークという偉大な天才2人を軸にした映画の製作のドキュメンタリー『2001 キューブリック クラーク』では、あの伝説的SF映画の制作の内幕を記した一冊である。
なかでも製作準備段階において、当時のSF小説の第一人者であったアーサー・C・クラークが参加するエピソードはまさにリディア・ターを彷彿とさせる。
キューブリックは映画製作においてあらゆる局面で自分のコントロール下に置くことを望んだが、それは共同制作者であるクラークにも及んだ。
彼を自分の意志に服従させるために自身の制作会社の社員となるようにクラークを説得しようとした。こうしたクラークとキューブリックの関係がとてもスリリングに描かれたノンフィクションなのである。
(文・すずきたけし)
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