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興行収入で計れない作品の価値

『もののけ姫』サンは1人で人間たちと対峙する
映画もののけ姫のワンシーン© 1997 Studio GhibliND

話を映画『もののけ姫』に戻そう。作品内容は変えずにアメリカの観客に少しでも受け入れられやすいように、いくつかの変更が加えられた。当時、DCコミックス社から発刊された、コミックシリーズ『サンドマン』の著者として知られる作家のニール・ゲイマンは、吹き替え版の脚本製作のために雇われた。彼に与えられた任務は、本作に含まれる日本特有の伝統的要素を簡略化し、わかりやすくすることだった。

また、米国版の映画『もののけ姫』のポスターデザインは奇妙なものに仕上がっている。オリジナルの本質とはかけ離れた「the fate of the world rests on the courage of one warrior“世界の運命は一人の戦士の勇気にかかっている”」というキャッチフレーズと共に、何故か本作のヒロインのサンがコインとなって描かれている。

さらに本作のマーケティングとしては、日本での成功や宮崎駿の作家性をフィーチャーしたものではなく、米国版のセレブな声優キャスト陣を強調するようなものが多く見受けられた。

公開当時、本作は米国内の限られた劇場でのみ上映が行われ、230万ドル(約3億4,374万※現在の価格)というやや期待外れの興行収入を記録。とはいえ、このような不幸な行き違いが起こったものの、映画『もののけ姫』は観客を確実に惹きつけたのは事実だ。

アメリカで最も影響力のある映画評論家の一人、ロジャー・エバートは、本作に4つ星中満点を付け、1999年の映画ベスト10に選出。また、本作は定期的に米国内で再公開が行われ、そのたびに大きな収益を上げ続けている。

また、映画『タイタニック』で知られるジェームズ・キャメロン監督でさえ、2009年のヒット作『アバター』に多大な影響を与えた作品として『もののけ姫』の名を挙げている。

映画『もののけ姫』は、米国では、売り出し方やセールスの面で多くの苦難に見舞われた作品となった。しかし、良い映画というものは、たとえ障害があったとしても、人々の心に時間をかけてしっかりと届くものなのだ。

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