2時間じゃ描けない波乱万丈な黄金期
●つんく
演じるなら、この人!
~北村匠~
1992年、バンド「シャ乱Q」のヴォ―カルとしてデビューするも、鳴かず飛ばずの時代が2年ほど続く。しかし、起死回生の名曲『シングルベット』(1994)を発表して以降、メロディ・メーカーとしての才能が本格的に開花。
1997年になると、テレビ番組『ASAYAN』のオーディション企画である「シャ乱Qヴォーカルオーディション」の落選者から選抜された者たちを集めてアイドルグループを結成するという、画期的なプロジェクトを始動。
これが、後の「モーニング娘。」となる。平成中期のアイドルブームを巻き起こし、日本音楽シーンを代表するモンスターグループのプロデューサーになったつんくは、2000年にはシャ乱Qの活動を休止させ、プロデュース業に力を入れ始めるが、“モー娘。ブーム”が過ぎ去った2013年にはソロシンガーとしての活動に加え、シャ乱Qも再始動。
第二の黄金期を迎えるかと思いきや、翌年、喉頭がんが発見される。その後、声帯を完全に摘出したことも公表し、世間に衝撃を与えた。
稀代のプロデューサーにして、稀有な歌声の持ち主であるつんく。その波瀾万丈な半生を網羅的に描くのは2時間という尺では不可能だろう。したがって、映画化する際には、90年代のエピソードに絞るのも一つの手かもしれない。
配役にも頭を悩ませるところだが、つんくこと寺田光男を説得力豊かに演じられるのは、ボーカリストとしての顔も持つ、北村匠海以外にいないだろう。
元々「シャ乱Q」は、近畿大学の学生5人によって結成されたバンドだ。期待に胸を高鳴らせて東京の地に降り立つ、若きつんく(北村)のクローズアップから始まり、名曲『シングルベッド』のモデルになった女性との出会いと別れ、そしてMr.childrenをはじめとするライバルバンドと鎬を削る日々が走馬灯のように描かれる…と妄想してみただけでアツい。
音楽をモチーフにした青春映画として男ウケが見込めるのはもちろん、北村匠海の確かな歌唱力で『シングルベッド』など歌われた日には、女性ファンは失神必至だろう。
北村がボーカルを務めるバンド「DISH//」の楽曲は、爽やかでシンプルなメッセージが特徴。『シングルベッド』や『ズルい女』といった男女のディープな関係を粘っこいリリックと歌唱で表現するシャ乱Qの楽曲に取り組むことは、北村にとっても大きなチャレンジになるのではないかと想像できる。
北村がつんくの伝記映画で見事に主演を務めあげることができたら、俳優、ボーカリストとしての幅がグッと広がり、20代後半に突入した北村の役者としての魅力を押し上げることに繋げるのではないだろうか。
最後に余談だが、筆者個人的にはつんくと言えば、若き日のナインティナインなどが出演していた伝説のバラエティー番組『とぶくすり』の最終回にて、リリース前の『ズルい女』をアコースティックギターの弾き語りで披露した場面を鮮明に憶えている。
このテレビ史に残る伝説的な一幕もぜひ劇中に盛り込み、ナイナイたちを現在の若手芸人たちが演じるというプランも提唱したい。