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『相棒』史上最高の神回は…? 約400話の中で最も面白いエピソード5選【亀山薫編】シリーズの歴史に残る傑作をセレクト

text by Naoki

変人だが腕が立つ刑事の杉下右京と、その相棒が事件を解決していくドラマ『相棒』。シリーズは2000年から2024年現在まで、約400話のテレビシリーズを始め、様々なコンテンツで親しまれている。今回は初代&5代目相棒・亀山薫(寺脇康文)の回の中でも伝説的なエピソードをセレクト。その面白さの真髄に迫る。(文・Naoki)

【初代&5代目相棒 亀山薫とは?】

寺脇康文【Getty Images】
寺脇康文Getty Images

熱い魂を持つ体力自慢で直情型のお人よし。配属当時冷徹だった杉下右京の心を溶かし”相棒”と呼ばれるだけの関係性を築いた功績者。S7で友人の想いを引継ぎサルウィンという国へボランティアに赴くがS21で14年振りに復帰し、ブランクを感じさせない抜群のコンビネーションを見せている。今回はそんな亀山薫の神回を5つ挙げていこうと思う。

レギュラーメンバー全員活躍。最高クオリティーの元旦スペシャル

『バベルの塔』シーズン5

放送日:2007年1月1日(元旦スペシャル)
脚本:古沢良太
犯人役:杉本哲太

【神回である理由】

本作の選出理由は“極上のエンターテインメント”であるからに他ならない。

物語は、特命係が富永議員主催の年越しパーティーの警備を行う事から始まる。パーティーで富永は、自身のSPかつバツイチで難聴の子供を持つ楓と結婚発表を行うなど盛り上がる。

そんな中、逃亡中の過激テロリスト・梶に楓は娘のはるかを誘拐され「富永を殺害しなければ娘を爆弾で殺害する」と脅迫を受ける。

彼女からのSOSを察知した特命係は誘拐事件の解決に動き、楓もウェイターの祥子を人質に立てこもり事件を起こして時間を稼ぐ。

楓の目的を理解しない捜査本部は射殺も視野に入れ、警視庁No.1狙撃手の日野をスタンバイさせる。苦労の末に特命係は本部の協力を取り付け、梶も逮捕されるが、犯人は梶を名乗っていた別人、五十嵐という人間で、祥子もその仲間であった。

2人の目的は末妹とお腹の子を傷つけて死なせた富永への復讐。正体がバレた祥子は楓の拳銃を奪い立てこもるが、楓の元旦那・和久井が命懸けで救出に動いた事で逮捕。

一方五十嵐は少女に情が湧き、爆風から身を挺して庇ってしまう。楓は娘が死んだと誤解し屋上で自殺を試みるが、数百メール先の強風吹き荒れる観覧車から日野警部補が拳銃だけを撃ち抜く。

少女は救われ、犯人は逮捕される。

杉下右京は語る。「昔、世界の言語は一つだったそうです。人々は高い塔を作って住もうとしましたが、神の怒りに触れ、言葉を通じなくされました。お互いを理解できなかった人々は散り散りになったという話です。ところが今日、言葉をしゃべらない少女によって、バラバラだった人々の心があのように…」

そこには楓と和久井とはるかが仲睦まじく笑い合う光景が広がっていた。

本作は今では毎年恒例になった『相棒』元日スペシャルの3本目。

見所は何と言ってもレギュラーメンバーが全員活躍した上で、事件も二転三転ありながらも飽きさせる事なくハッピーエンドに結実する点である。

脚本を執筆した古沢良太は『リーガル・ハイ』(2012~2014、フジテレビ系)やNHK大河ドラマ『どうする家康』(2023)などで知られる今一番忙しい脚本家。本作は古沢が若手時代に描いた2時間スペシャルで、元日に相応しい高純度なエンターテインメントとなっている。

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