1984年と2024年をつなぐ曲の力とは…? 映画『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー 』徹底考察&解説レビュー
映画から受け取った感動を全く別の体験に繋げることで、人生はより豊かになる。本コラムではライターでブックレビュアーのすずきたけしが、話題の映画のレビューと作品理解が深まる本を紹介。“本のプロ”の視点から映画と書籍を繋げ、双方の魅力を引き出す。今回は映画『ゴーストバスターズ/フローズンサマー』を考察。(文・すずきたけし)
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【著者・すずきたけし プロフィール】
ライター。『本の雑誌』、文春オンライン、ダ・ヴィンチweb、リアルサウンドブックにブックレビューやインタビューを寄稿。元書店員。書店と併設のミニシアターの運営などを経て現在に至る。
期待していなかった新たな『ゴーストバスターズ』
映画『ゴーストバスターズ/フローズンサマー』を見た。
本作は2022年に日本公開された前作『ゴーストバスターズ アフターライフ』の続編であり、1984年公開された『ゴーストバスターズ』、そして『ゴーストバスターズ2』から 38年後を舞台にした続編にあたる4作目。
前作の『ゴーストバスターズ アフターライフ』が制作されると知った時は正直なところ期待をしてなかった。理由は2016年にリブートされた『ゴーストバスターズ』(2016)にあった。
コメディ映画『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』(2011)で楽しませてくれたクリステン・ウィグを主演に、ケイト・マッキノンなどサタデーナイトライブ組をメインキャストにした女性版ゴーストバスターズという試みはとても魅力的だったものの、残念ながら物語の重心がコメディに傾きすぎていたために、オリジナルの“ゴーストバスターズ”の魅力であった、シリアスと笑いの絶妙なバランスが影を潜めてしまっていた。
実のところ、コメディ映画と思われがちな『ゴーストバスターズ』の魅力は、我々の世界と地続きであることを感じさせるリアルでシリアスな世界観がしっかりと描かれていることなのである。
ということで、ゴーストバスターズがただのコメディ映画として作られるのならば、再び映画化されても、あの絶妙なテイストの作品が登場することはまずないだろうと感じていた。
ところが、予告編で「ECTO-1(エクトワン)」(劇中に登場するおなじみの車両)が麦畑を疾走するシーンで俄然テンションがあがってしまった。その予告編は笑いが一切なく、極めてシリアスなテイストで作られていたからだ。
ふたを開けてみれば『ゴーストバスターズ アフターライフ』は、あの1984年の『ゴーストバスターズ』の世界観、そして物語を継承した、まさに続編の名にふさわしい映画であった。