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「原作に無いものはノイズになる」
小説から映像への肉付け作業

写真:Wakaco
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―――物語の舞台は原作と同様の1986年の日本ですが、これをあえて現代に即した形でやろうというアイディアもあったのでしょうか?

「ご存知の通り、現代劇として嵐の山荘ものとなった場合、一番難しいのは外界との通信の問題ですよね。携帯電話とか、あらゆる可能性を排除しようと思うと、その分だけ理屈を追加していかなければならない。

でもそれは原作にはないものなので、やっぱりノイズになるんじゃないかと思うんです。現代設定にして、携帯はどうする?電波が飛んでない?ネットは?なんて可能性を消す作業を追加するなら、86年の世界を作る方が建設的じゃないか?そう思って今回は原作通りの86年で進めました」

―――本作は、原作にとても忠実でありながら、登場人物の心情が原作以上に掘り下げられていると感じました。脚色された部分については、脚本担当の八津弘幸さんだけでなく、監督ご自身もアイディアを出されたのでしょうか?

「そうですね。たとえば、過去に推理小説研究会で起きた事件は、原作小説ではそれほどディティールが細かくない部分です。それを映像にするには、具体性が必要になります。

もちろん、綾辻さんとも相談して、『このような解釈をしたい』ということと、江南が主人公として追求していく形にしたいというお話をさせていただきました。結果的に江南は盛大に間違えるんですが、それが僕は好きなところなんですけどね(笑)。

この展開にしたことで、元の原作の設定がより深められたんじゃないかなと思うんです。ストーリーと紐づけるためにも、八津さんと我々プロデューサーも含めて結構揉んだと思います」

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