「江南のことを知っていてそばにいる人が欲しかった」
ドラマオリジナルキャラクター・松本邦子について
―――奥智哉さん演じる江南の自宅アパートのシーンで、本棚にミステリー小説が並んでいるところが映し出されますね。既存の小説をもじったりしているのでしょうか?
「ミステリー小説っぽく見える架空のタイトルをつけています。同じやつが2冊入ったりしているのは、ファンだったら同じものを2つ買ってしまう、みたいなものを考えていますね」
―――本棚のそばの黒板には、シャーロック・ホームズの『踊る人形』の暗号が書かれていますよね。
「そうです。演出部と美術部で、江南が普段やっていることをイメージして作ってあります。あの部屋には他にも色んなオマージュがあるので、気が付く人は気が付くんじゃないかと」
―――本作は、原作小説にほぼ忠実に作られているなかで、唯一異質とも言える存在が、濱田マリさんが演じる江南のアパートの大家である松本邦子です。彼女は殺人事件とは関係のない部外者ながら、江南にお節介を焼いたり、真に迫るようなセリフもあってとても印象的なキャラクターでしたが、どのような意図で彼女を登場させたのでしょうか?
「『十角館の殺人』の構造は、十角館の中は十角館の中で完結していて、本土の方は江南と島田が中心に動くというのが特徴で、セパレートされている。本土の2人が動く上でのエネルギーになる何かが必要だと思いました。
他の人たちは容疑者ばかりになってしまうので、江南にとってのある種のメンター的な存在になるような。島田以外で江南のことを知っていて、物理的にそばにいる人が欲しかったんです。
実はあれは、シャーロック・ホームズの大家さん、ハドスン婦人のポジションです。脚本の八津さんが『是非出したい』と言って、この話は綾辻さんともしましたね。初めて出てくるキャラなので、これはどういう趣旨なのかっていう確認もかねて。綾辻さんには『そういうことね、なるほど』って感じで聞いていただきました」