ホーム » 投稿 » インタビュー » 「小説の感激をドラマを観た人にも同じように感じて欲しい」Huluドラマ「十角館の殺人」内片輝監督、単独インタビュー » Page 6

「お客さんに対して卑怯なやり方はしたくない」
原作小説の”あの1行”への緻密な画面コントロール

写真:Wakaco
写真Wakaco

―――本作の肝となるのは原作の「あの1行」と、そこに至るまでの演出だと思います。映像を観て、序盤は特に、カメラワークや演者の立ち位置などにとても気を配っていると感じました。監督がこの撮影で最も苦労されたところを教えていただければと思います。

「それはやっぱり、原作を読んで答えを知っているから、そういう見方をしていたということですか?つまりアレを探したということですか、あのショットの中に」

―――率直に言えばそうです。例えば、ある人物が右端でアップに映しだされているときに、別の人物が左端の奥にいたりだとか、立ち位置や目線の動きなどは追っていました。

「よく見てますね(笑)。この作品を成功させる鍵がキャスティングと撮り方でした。1番簡単なのは、ある人が存在しないように撮ってしまうこと。そうすれば絶対に見えないけど、でもそれって、お客さんに対してフェアじゃない。

原作を初めて読んだ時に受ける衝撃を、 映像作品で初めて接したお客さんにも同様に感じて欲しかったんです。小説には、いるものとして書いているのに、それを映像上ではいませんという状態に描くと卑怯じゃないですか。それはしたくないんですよ。それではもはや『十角館の殺人』ではなくなっちゃうので」

―――最後に、これまでミステリー作品を多く手がけられた内片監督ですが、ミステリー作品を作る際に心がけていることは何でしょうか?

「ミステリー作品だとトリックがやっぱり重要だと思います。ミステリーを映像化する時は、案外、動機の部分を膨らます傾向があるかと思います。プロデューサーは結構それを求めるんですね。最終的な登場人物の感動はどこにあるのか、とか。

本格ミステリでは、動機の強弱は問題ではない気が僕はしています。それは受け手の主観によるんじゃないか?と。原作物をやるとしたらですけど、動機の前に、原作に書かれているトリックのロジックを絶対に間違えずにやることだと思います」

(取材・文:あさかしき)

【作品情報】
タイトル:Hulu オリジナル「十角館の殺人」
配信表記:3 月22 日(金)AM10 時からHulu で一挙独占配信(全5話)
キャスト:奥 智哉 青木崇高 / 望月 歩 長濱ねる 今井悠貴 鈴木康介 小林大斗 米倉れいあ 瑠己也 菊池和澄 /
濱田マリ 池田鉄洋 前川泰之 河井青葉 / 草刈民代 角田晃広 仲村トオル
原作:綾辻行人『十角館の殺人』(講談社文庫)
監督:内片 輝
脚本:八津弘幸 早野 円 藤井香織
音楽:富貴晴美
プロデューサー:内片 輝 内丸摂子 木下 俊 / 中村圭吾 渋谷昌彦
チーフプロデューサー:石尾 純 勝江正隆
エグゼクティブプロデューサー:川邊昭宏 長澤一史
制作:下村忠文
制作協力:内片輝事務所 東阪企画 いまじん
製作著作:日本テレビ
クレジット表記:©綾辻行人/講談社 ©NTV
公式サイト
公式X
「十角館の殺人」Hulu 配信ページ

【関連記事】
「失敗して、考えて、試行錯誤を重ねていくのが僕のものづくりのやり方」映画『夜明けのすべて』三宅唱監督、単独インタビュー
若葉竜也「映画界に一石を投じる作品になる」 映画『ペナルティループ』主演・若葉竜也、監督・荒木伸二監督インタビュー
「勝つでも負けるでもなく遊ぶ」映画『PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』古厩智之監督、単独インタビュー

1 2 3 4 5 6
error: Content is protected !!