エイリアンだったのは晴の方?
同じく映像学科で学ぶ同級生の赤澤(杉田雷麟)の制作を手伝っていた晴は、ユリを失った喪失感から荒んでいた。女優としてのユリを歯の浮くようなセリフで評する赤澤を笑い、作っている映像もバカにする。
それに怒った赤澤が、自分や他の制作関係者もユリと関係を持っていたことを明かす。年末に晴とユリが楽しんだ人生ゲームも、おそらくはスタッフの1人の家からユリが勝手に拝借したものだろうということがうかがえるやりとりまで。それはもう手当たり次第に、ユリがいろんな人の間を行ったり来たりしていたということ。
疑いながらもなんとか信じてきた(元)恋人のとんでもない事実を突きつけられた晴。
臼井は晴に、ユリは破天荒でも自由奔放でもなく、ただ自信がなくて意志が弱くて、人の気を引くために何でもする人だったのだと言う。そんなユリだから、優しい晴を精神安定剤にしていたのだ、と。それを受けて、晴は「俺、優しくないよ」と応じる。
その理由らしきものが明らかになるのは、晴と臼井が付き合いはじめたあと。ユリへの暴言に怒ったことが骨折の理由だと臼井は思い込んでいたが、晴の部屋に貼られたカレンダーの下には拳くらいの大きさの穴が隠れていた。臼井がユリを殴ったのかと尋ねても、白を切る晴。
だけど、「晴くんのこと全然わかってない」というユリの言葉、「俺、優しくないよ」という晴の言葉を思えば、もしかして、という疑惑がどんどん膨らんでくる。
本来ならば、臼井はここで晴から離れる選択もできたはずだが、逆にどんどん依存をしていく。ユリが合鍵を持っていることから晴の家の鍵を付け替え、残っていたユリの私物も、ユリからのメッセージが大量に書かれた晴のギプスも捨ててしまう。
カラー剤にまみれたユリとの思い出を必死に救い出そうとして、どんどん緑に染まる晴の手。エイリアンの血のように見えるそれは、ユリの残像からではなく、晴自身から流れたものみたいに見える。エイリアンは、もしかしたら晴だったのではないか、という気持ちが過る。
そんなときに、ユリから久しぶりの着信が。大学を辞め、北海道にいるという。「会いたいって言ったら、会いに来てくれる?」と問うユリに対し、晴は一筋の涙を流し、「会いたかったなー」と呟く。「会いたい、でも、もういい」。大晦日に「迎えに行く」と言ったのは晴なのに、約束ではなく、やっぱりそれは仮定の話の域を出なかった。
かくして臼井との平穏な日常がはじまる。晴が「もし仮に…」とユリの口癖を口にしたことに怒った臼井。「ごめんなさい」と謝る晴に、「はい、許します」と同じくユリの口癖を言って笑った臼井を見て、晴は「撮っていい?」と目を見開く。スイッチが入る音が聞こえた気がした――。