家族との確執
親子関係を紐解く鍵とは？

気になるのは、やはり夏目が音楽をやめるきっかけとなった5年前の事件。かつてウィーンで指揮を執っていたときも、一線を退いて晴見フィルの演奏を聴くときも、5年の時を経て再び指揮台に上がったときも、夏目は心底楽しそうだった。

裏表のなさそうな屈託のない笑顔と、身体全体で指揮棒を振る動き。音楽を愛し、きっと音楽に愛されているだろう天才指揮者の躍動と無邪気さを、西島が余すことなく表現していた。だからこそ、なぜこの人が？という点が気になって仕方ない。

そして同時に、娘の響が過剰とも思えるほどに父親を嫌悪するに至った理由も気になるところだ。かつてウィーンで音楽をやっていたらしい彼女は、舞台上で演奏を終え、“何か”か“誰か”を探していた。その目は、たしかに不安でいっぱいだったように見えた。一体何があったというのだろう。

親子関係を紐解くにあたっては、焼栗と手紙が鍵になる気がするが……果たして。