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「お涙頂戴の話にはしたくなかった」映画『あつい胸さわぎ』まつむらしんご監督&女優・石原理衣さん独占インタビュー

text by ZAKKY

演劇ユニットiakuの横山拓也が作・演出を務めた舞台作品『あつい胸さわぎ』。母と娘の視点から乳がんをテーマに描いた話題作が、まつむらしんご監督によって映画化され、全国の劇場で公開中だ。今回は、まつむらしんご監督、本作のプロデューサーであり、出演者でもある石原理衣さんに、製作秘話を語っていただいた。(取材、文・ZAKKY)

【まつむらしんご プロフィール】

写真宮城夏子

1981年生まれ。『恋とさよならとハワイ』(2017)は大阪アジアン映画祭JAPAN CUTS Award、上海国際映画祭アジア新人賞部門【脚本賞 ・撮影賞】受賞。台北金馬映画祭NETPAC賞にノミネート他、台湾では3都市で劇場公開される。

【石原理衣 プロフィール】

写真宮城夏子

1976年生まれ。現在までに50本以上の映画に出演。日波合同制作『赤糸で縫いとじられた物語』(2020/監督:松下ユリア)でワラキア国際映画祭最優秀助演女優賞を受賞。プロデュース・主演を務め、初監督した短編「寓」(2022/共同監督:小野川浩幸)が、シッチェス・カタロニア国際映画祭最優秀短編賞を受賞。

【作品紹介】

“若年性乳がん”と“恋愛”をテーマに、揺れ動く母娘の切実な想いを繊細さとユーモアを持って描きだす。母親を演じるのは、監督が“太陽のような温かい存在感”と出演を熱望した常盤貴子。主人公“千夏”には、「ドラゴン桜」(2021)で注目された吉田美月喜が18歳の不安定な気持ちをリアルに演じる。10代から大人まで、すべての世代の心に響く青春映画が誕生!!

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「お涙頂戴の話にはしたくなかった」
青春映画の醍醐味も味わってほしい

©︎2023映画あつい胸さわぎ製作委員会

―――まず、試写を観させていただいた感想を。ガン泣きでした…。

まつむら「ありがとうございます(笑)」

―――個人的に、近年まれに見る、素晴らしい映画だと思いました。

まつむら「本当に嬉しいです! この映画の原作となる横山拓也さんによる舞台を観た際に感銘を受けて、映画化したいと思っていたんです。2年くらい他の映画の構想も含め、企画がなかなか通らなかった時期があって、石原さんに色々と話を聞いてもらっていたんです」

石原「私は元々、まつむらさんの作品がとても好きだったんです。だから、その話を聞きながら、企画が進むにつれて脚本からまつむらさんの良さが削られるような改変が毎回なされていくのがとても悔しくて。なので、まつむらさんからこの舞台を絶対に映画化したいと打ち明けられたとき、何ができるかわからないけど、とにかく一緒にやりましょうという話になり、そこからタッグを組み、映画実現へ向けてのスタートを切りました」

©︎2023映画あつい胸さわぎ製作委員会

―――石原さんはプロデューサーでもあり、出演もされています。そのような立ち位置で作品に携わるのは珍しいですよね?

石原「私は今までプロデューサーの経験はまったくなかったのですが、海外ではファイナンスを集めるプロデューサーとクリエイティブコントロールをするプロデューサーが別々にいるせいか、以前からよく海外の映画監督から、『あなたはプロデューサーに向いている』と言われていたんです。特に監督の作家性を生かしながら、いろいろなクリエイティブな提案がロジカルにできる貴重な存在だと」

―――なるほど。だから、一部の隙もない作品に仕上がっているわけですね。

石原「いえいえ、そんな(笑)!」

まつむら(今度は監督が、無言でにっこり)

―――いえ、本当にそう思います。ストーリーもキャラクター像にも、まったく無駄がないです。

まつむら「そう言ってもらえると、嬉しいですね。主人公・千夏が患う“若年性乳がん”がストーリーのテーマではあるのですが、お涙頂戴の話にはしたくなかったんですよ。啓蒙性を過度に押し出したくなかったのです。1人の女の子が困難を乗り越えるために一歩を踏み出す。重いテーマを描くと同時に、青春映画の醍醐味も味わってもらうため、上手くバランスをとることを意識しましたね」

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