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「日本では生きづらい」クラブハウスで知り合ったLGBTQ当事者の声で一念発起。映画 『手のひらのパズル』監督・黒川鮎美インタビュー

text by 山田剛志

2月11日より池袋シネマ・ロサで公開される映画『手のひらのパズル』は、“結婚の平等”をテーマに据え、俳優の黒川鮎美さんが初めてメガホンをとった短編作品だ。今回は、監督、脚本、製作・編集・主演と1人5役を務めた黒川監督のインタビューをお届け。LGBTQ当事者の声に突き動かされて製作された本作の魅力に迫るお話をたっぷり伺った。(取材・文:山田剛志/映画チャンネル編集長)

【黒川鮎美 プロフィール】

撮影武馬怜子

1985年生まれ。京都府出身の映画監督・俳優。役者として、映画『僕らはみーんな生きている』(2022)、ドラマ『アンサングシンデレラ』(2020、フジテレビ)などに出演。2021年1月末に、音声SNS「クラブハウス」を通じて、LGBTQ当事者の声に触れたことをきっかけに、本作の製作を決意。完成した作品は、レインボーマリッジ・フィルムフェスティバル、香港レズビアン&ゲイ映画祭をはじめ、国内外の映画祭に入選を果たし、話題を集めた。

「自分は優遇される側と痛感した」
LGBTQ当事者の会話から知った日本での生きづらさ

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―――2021年初頭にクラブハウスを通じて、LGBTQ当事者の方からリアルな経験談を聞いたことが、本作の出発点になったと伺いました。

「はい。当時流行っていたクラブハウスは、様々な業界の著名人の声を直に聞けるという点で画期的だと思い、友人に誘われてよく使っていたんです。色々なミーティングに参加する中、ある時、“LGBTQの部屋”という集まりを見つけて入ってみました。私の周囲にもLGBTQ当事者の方がいて、日常的に話を聞いてはいたのですが、その内容は、パートナーと喧嘩した話など、一般的な男女が抱える悩みと変わらないものでした。しかし、“LGBTQの部屋”で語られていたのは、“みんなが当たり前に出来ることが当たり前に出来ない”という、当事者の尊厳にかかわる深刻な悩みでした」

―――具体的にどのようなお話を聞いたのでしょうか。

「恋人が入院した時にお見舞いに行ったら、病院側からパートナーとして扱ってもらえず、『血も繋がってないようなので入れません』と門前払いされたという経験談や、恋人と住むための家を借りるにも、同棲ではなく、ルームシェアという形でないと認められなかった、といったお話を聞きました。“平等に認められているはずの権利を行使できない人たちがいる”という事実を知った時に、『これはおかしいぞ』と感じ、もっと多くの声に触れたいと思い、クラブハウス内に“LGBTQの部屋”を立ち上げて、毎日3時間ほど当事者の方と対話をするようになりました」

C2022BAMIRI

―――100名以上の方から話を聞いたということですが、対話をした方々の年齢層はどのようなものでしたか?

「下は19~20歳から、上は50歳弱まで、幅広い年齢層の方とお話をしました。もちろん年代によって、悩みは違ったりするのですが、結論としては、「当たり前の権利が保障されないから日本では生きづらい」というのが、皆に共通していました。話を聞いているうちに、当事者の方々が不平等にさらされているという事実にショックを受けると同時に、自分自身が『優遇される側にいる』ということも痛感させられました」

―――ご自身の足場が崩れるようなお気持ちになったのではないかとお察しします。

「法律さえ変われば、壁を突破出来る。それなのに制度は一向に変わらず、当事者の方々は、生きづらい思いを強いられています。本当は日本に住みたいのに仕方なく海外で結婚する方もいらっしゃいました。とはいえ、制度を変えるといっても、私は政治家でもなければ活動家でもない。私に発信できるものは何かと考えた時に、職業柄、ドラマか映画しかない。そして、世界中の人に観てもらえる可能性があるとしたら、やっぱり映画だろうと。それが本作の出発点でした」

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