映画『死体の人』は面白い? 唐田えりかが風俗嬢役を熱演。忖度なしガチレビュー【あらすじ キャスト 考察 解説 評価】
text by 寺島武志
奥野瑛太と唐田えりかがW主演を務めた映画『死体の人』が3月17日より公開される。奥野瑛太演じる主人公は死体役でしか呼ばれない売れない役者。唐田えりか演じる加奈はヒモ男と暮らす風俗嬢。そんな2人が出会い、それぞれの人生を見つめ直していく。生きることに不器用な人々を描いた本作のレビューをお届けする。(文・寺島武志)
主人公は”死体役”のプロフェッショナル
従来のイメージを一新する唐田えりかの演技に注目
本作の主人公・吉田広志(奥野瑛太)は、死体役ばかりの「俳優」というより、よりエキストラに近いような「演者」と表現した方が近いような、売れない役者だ。撮影時にも、監督などのスタッフから、名前で呼ばれることはほぼなく、「死体の人」と呼ばれることがほとんど。
しかし、本人は真摯に仕事に臨んでおり、時には、「死体の何たるか」「どのように演じれば死体に近付けるか」を監督に訴えるものの、そんな名もなき俳優が語ることなど、聞き入れてはもらえない。それでも心が折れることなく、自宅でも、毒殺を演出したり、お風呂に入りながら溺死したりと、“殺されるシーン”を何度もシミュレーション。真面目を通り越して、愚直とも言える性格の持ち主だ。
そんなある日、ティッシュに挟まっていた広告に釣られて、デリヘルサービスを利用。自宅に訪れたデリヘル嬢・加奈(唐田えりか)の美貌に惹かれ、リピーターになっていく。
その加奈も、私生活はボロボロ。加奈の彼氏はミュージシャンを目指すと言いながら、加奈が体を売って得た稼ぎをブン捕っては、バクチ三昧の日々。絵に描いたようなヒモ男だ。そんなダメ男から逃げ、加奈は広志を頼りに、かくまってくれるように頼む。
しかし、このヒモ男は加奈に付きまとい、広志の家に殴り込んでくる。“ヒモ男あるある”ではあるが、怒声を張り上げ暴力的になるだけではなく、それがダメなら泣き落としに切り替え、ありとあらゆる手段で、“金づる”である加奈を取り戻そうとする。そこで、広志と加奈が取った作戦が、本作のハイライトともいえるシーンだ。思わず“そう来たか!”と快哉を送りたくなる“大芝居”。詳述は避けるが、ぜひ各自、スクリーンで堪能してほしい。