ショッカーは絶対悪ではなく必要悪
「特撮ヒーロー」もので現代社会を映し出す
自分でも把握できないほどの力を持ち、それを持て余し苦悩する、池松壮亮が演じる本郷猛の姿が印象的だ。池松が二枚目俳優であることは否定しようがないが、どこか“昭和っぽさ”を感じさせる、その雰囲気が本郷猛という役柄にピタリとはまっている。
そして、それは、一文字隼人を演じる柄本佑に関しても言えることだ。そして、原作では、仮面ライダーが絶対的な“善”で、ショッカーが世界征服を目論む“悪”という設定である。
しかし、本作でのショッカーは、非合法組織でありながら、「Sustainable Happiness Organization with Computational Knowledge Embedded Remodeling(持続可能な幸福を目指す愛の秘密結社)」という正式名称からもわかるとおり、アイやケイといったAIが、「この世に絶望した人間を救済する」というミッションを実行する“絶対悪”というよりも“必要悪”のような存在だ。
ショッカーの立場に立てば、その活動は、人類を幸福にするためでもあるのだ。まるで、善悪の境目が曖昧であり、立場によっては善悪の立場が逆転するような、現代社会を映し出しているようでもある。その点、本作は子供向けの「特撮ヒーローもの」というよりかは、仮面ライダーというヒーローをモチーフにした人間ドラマに近い印象だ。
原作をオマージュしたストーリー展開が、様々な描写に隠されており、ラストまで飽きさせない。エンドロールに被さる音楽は、子門真人が歌う「レッツゴー!! ライダーキック」「かえってくるライダー」といった原曲たち。オールドファンであれば、胸に刺さる締め方で、ノスタルジックな気持ちに浸れるだろう。
(文・寺島武志)
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