「夢を賭ける価値があんなチームにあるんですか?」
物語のテーマを集約した音羽の言葉
本作では、学生時代の回想シーンとして、音羽と鴨居の空港での別れが描かれている。鴨居は米国で最先端の技術を学ぶために渡航しようとしているが、音羽のパスポートを持ち出して勝手にチケットを取り、一緒にアメリカに行くかどうか、音羽に最後の選択を迫る。
だが、音羽は「誰もが平等に医療を受けられる世の中にする」という信念を曲げることなく日本に残る。2人はYOKOHAMA MERの統括官とチーフドクターという立場で再会し、鴨居はその時に引き留めてほしかったという本音を、音羽は鴨居の夢を邪魔することはしたくなかったという思いを遠まわしに伝え合う。
ここに音羽尚という人物の魅力がある。音羽の母は、お金がなかったことで治療を受けられずに若くして亡くなった。医療の格差を是正するために音羽は医者としてではなく官僚として日本を変えようとしている。TOKYO MERを去った後は、東京だけを救うのではなく、その理念を全国に広げようと仕事に取り組んでいるのだ。
一方、音羽のかつての恋人・鴨居は、かつて夢のために自分との別れを選んだ音羽が、海外で逮捕歴のある喜多見や寄せ集めのTOKYO MERを支持していることに疑義を抱く。
鴨居は音羽の真意を、食事の席でデザートを食する際に垣間見る。このシーンで音羽は、お菓子作りが得意だった喜多見の妹・涼香(佐藤栞里)を思い出す。TOKYO MERが出動した事件における唯一の死者であり、互いに思いを寄せていた涼香の死を、音羽はまだ引きずっていたことが明らかになるのだ。
そんな音羽に振り向いてほしい鴨居は、「あなたの夢を賭ける価値があんなチームにあるんですか?」と彼に問いかける。この問いに対する音羽の答えは、本作のテーマを集約している。