TOKYO MERを危機に陥れる徳重聡の“怪演”に注目
危険を顧みないヒーローとしての“表の主人公”が喜多見ならば、陰に日向にTOKYO MERの存在価値を示していく役割を果たす“裏の主人公”といえるのが音羽といえよう。
ランドマークタワーでの火災現場では、初出動になるYOKOHAMA MERと応援に出向いたTOKYO MERが共同で救助活動にあたることに。現場を総括するのは音羽だ。
音羽が的確な指示を出して人命救助に励むシーンでは、彼の有能さが際立つ。また、過去に何度も縦割りの現場に悔しい想いをしてきた分、自身の裁量で現場の動きをコントロールできる状況にやり甲斐を感じている彼の心の動きが伝わってくる。
しかし、TOKYO MERを敵視する両国厚生労働大臣が出張ってきたことで、音羽は苦汁を飲むことになる。
火災現場に突入したTOKYO MERが窮地に立たされ、迷いを露わにした鴨居が音羽に指示を仰ぐ中、両国大臣は、YOKOHAMA MERの派遣を阻止するのだ。
全てはTOKYO MERの“敵失”を待ち、多数の犠牲者と引き換えに、自身の立場を有利にしようとするためだ。
両国大臣を演じる徳重聡は「21世紀の石原裕次郎オーディション」でグランプリに輝き、華々しくデビューしたものの、しばらくは“石原裕次郎の幻影”を追うあまり、役柄に恵まれない年月を過ごした。
しかし、現在では悪役や、コメディー要素のある役柄を“怪演”し、バイプレーヤーとして開花した俳優だ。同作でも腹黒い政治家を嫌味タップリに演じ切っている。
そんな両国大臣を横に、無線を通してかつての仲間の苦悶の声が聞こえてくる中、当初は怯えていた研修医の潮見知広(ジェシー)も決死の突入を見せる。千晶が危険な状況に陥る中、喜多見が応援を要請すると、音羽は大臣の制止を無視して鴨居に語りかける。音羽の最大の見せ場の一つだ。