『ドライブ・マイ・カー』【ネタバレあり】あらすじ
音が亡くなってから2年。家福はワークショップの講師として、広島の国際演劇祭に招かれる。ワークショップ期間中、演劇祭のスタッフは家福に専用のドライバーを用意。かつて招いた講師が事故を起こして以来の決まりだという。
家福は演劇祭スタッフの配慮に難色を示すが、ドライバーのみさき(三浦透子)の見事な運転技術と、寡黙で人に干渉しない性格を気に入り、彼女に運転を任せることにする。
世界的な演出家である家福が講師を務めるとあって、ワークショップには応募者が殺到。家福は応募者リストに高槻の名前を見つけ、驚く。オーディションが実施され、年齢、性別、国籍を異にするバラエティ豊かなメンバーが選ばれる。合格者には高槻も含まれている。
ワークショップの演目は『ワーニャおじさん』である。家福は広島に来てからも、みさきが運転する車の中で、亡き妻による『ワーニャおじさん』の朗読を聴いている。家福は高槻を主役であるワーニャおじさん役に指名し、上演に向けた稽古が始まるのだった。
稽古後、高槻は家福をバーに誘う。高槻は女性スキャンダルによって事務所もクビになり、役者生命の危機に瀕していた。家福は高槻の才能を惜しみ、「俳優業に集中しろ」と苦言混じりのアドバイスを送る。高槻は家福の言葉を受け止めつつ、失礼なバーの客に対して過剰な怒りを示し、危なっかしい一面を見せる。
みさきの運転するサーブ900の車内は、穏やかな雰囲気が流れている。みさきは壮絶な過去を訥々と語り、家福との心の距離を縮めていく。
稽古が進んでいく。高槻は役に入り込めないことに悩んでおり、再び家福に相談を持ちかける。高槻はまたもや野次馬に盗撮され、怒りで拳を震わながら逃げる男を追っていく。その晩、家福と高槻はみさきの運転する車で帰路に着く。
本番が目前に迫る中、リハーサル中に刑事が訪れ、高槻が連行される。高槻は盗撮被害に遭って逆上し、撮影者を殴って死なせてしまったのだ。家福は高槻の代わりに主役を演じることで、上演を乗り切ろうと決意する。
本番まで残すところあと数日。家福は気持ちを切り替えるために、みさきの故郷・北海道へロングドライブに出る。
みさきは土砂災害で実家を失い、その際に母親も亡くしていた。彼女は母親から長年に渡り虐待を受けており、母の死に複雑な気持ちを抱いている。
家福はみさきの話を受け、音の不倫を見過ごすのではなく、しっかりと向き合うべきだったと後悔し、涙を流すのだった。
本番当日。家福は堂々とした芝居で主役を演じきり、舞台は大成功を収める。
時が経ち、みさきは家福の愛車・サーブ900を受け継いだ。運転席のみさきは晴れやかな表情で車を走らせる。