「会った瞬間から円陣を組めたような気がした」
ヒロインを演じた古川琴音の才能
―――日和と雨森が関係を築いていく過程で、言語を介するのではなく、言葉を歌に変化させながら同じリズムを共有したり、仕草を真似し合うなど、言葉のレベルを超えて分かり合う瞬間が魅力的に描かれていました。それらは現場で生まれたものだったのでしょうか?
髙橋「どれも現場で生まれたものですね。全部、琴音ちゃんと廣末くんが2人で作ってくれました」
―――2人にしかわからない関係性、世界観が丁寧に積み重ねられた結果、最後の日和の決断に繋がるわけで、理屈を超えた関係のあり方が感動的でした。今回、廣末さんをはじめ、群青いろの常連キャストが名を連ねる中、ヒロインに群青いろ作品初参加となる古川琴音さんを迎えられたわけですが、現場づくりにおいて、いつもとは異なる部分はありましたか?
髙橋「僕らはいつも主婦の方や会社員の方といった、一般の方々と作品づくりをしてきました。これまで芸能一本で仕事されている方を主演に迎える機会はあまりなかったですし、正直、少し身構える部分はありました。でも最初の顔合わせで懸念は一気に吹き飛びました」
廣末「古川さんは、台本から読み取った気持ちや、シナリオに対して自分が思ったことを書き留めたノートを携えてきてくださったんです。
読み合わせで脚本の一節を読んでいただいたのですが、まるで脚本からキャラクターが飛び出してきたようで…。すぐに“この人しかいない”という気持ちになりました」
髙橋「今回は一緒に仕事をするというよりも、チームで一丸になって一緒に作っていこうというような体制。琴音ちゃんとは、会った瞬間から円陣を組めたような気がしました」
―――古川さんからも是非お話を聞いてみたいですね。
髙橋「この間一緒に取材を受けた時に話したんですけど、『波長が合う』って仰ってくれました」
廣末「有難いね」
―――まさに“波長が合う”様子が、映画にも映っていると思いました。廣末さんに伺いたいのですが、日和と雨森の阿吽の呼吸を表現するために、カメラがまわる前に打ち合わせはされたのでしょうか?
廣末「一切ないんですよね」
髙橋「あ、ないんだ」
廣末「古川さんは、ただそこに存在して、感じたものをそのまま表出してくれました。女優さんとして凄い能力の持ち主だと思います」