③鳥山明の世界観:当たり前に描く異種族との共存
『Dr.スランプ』時代から、人間ではないが言語を話せる種族が当たり前のように地球に共存している世界観は、『ドラゴンボール』にも引き継がれている。
おそらく、映画『スターウォーズ』(1977)に影響されていると思われるが、鳥山明氏が描くそれは、実にカジュアルかつユーモラスである。その実例をいくつか挙げてみよう。
・悟空たちが参戦する二度目の天下一武道会の出場者である「男狼」は、亀仙人を恨んでいる。なぜなら、「満月を見ると狼から人間の男になる」という人物であり、前大会にて、亀仙人による「カメハメ波」で、月を破壊されたから。
・天津飯は、地球に降り立った「三つ目族」の末裔といった裏設定がある。背中から二本の手が生えてきたり、4人に分裂できるなどは、その名残りであるが、詳細は本編では明かされていない。
・神様から分裂した悪の心が、ピッコロ大魔王であり、神様はそもそもナメック星人。ナメック星の災害の際の幼少期に、地球に送り込まれた。サイヤ人であるベジータ&ナッパがピッコロに「あいつ、ナメック星人だぜ」と指摘された際に、「知らなかった、私が宇宙人だったとは。どうりでみんなと少し違うなと…」といったボケをかますのも、さすがの鳥山明氏の、ほのぼのセンス。
神様は、後に閻魔大王に対して「さすが、地獄耳!」「お前、ギャグのセンスないのう」などといったクラッシュトークをするなど、時にはコメディ―リリーフとしての顔も見せる。が、最終的にピッコロと再び融合し、「今の地球に必要なのは、神ではない。強者なのだ」と、ピッコロのパワーアップのため、その身を投じる姿は、胸熱であった。