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『ドラゴンボール』で叶わなかった鳥山明の悲願とは? 映画『SAND LAND』徹底考察&評価。声優の演技も解説

text by ZAKKY

鳥山明の伝説の名作を映像化した映画『SAND LAND(サンドランド)』が公開中だ。水不足に苦しむ砂漠の世界が舞台の物語。今回は、鳥山明が『ドラゴンボール』終了後、“老人”と“戦車”が描きたくて生み出した趣味120%の本作のレビューをお届けする。(文・ZAKKY )【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

悪魔・魔物・人間の奇妙なトリオ

©バード・スタジオ/集英社 ©SAND LAND製作委員会
©バードスタジオ集英社 ©SAND LAND製作委員会

『SAND LAND』は、『週刊少年ジャンプ』にて、2000年23号から36・37合併号まで短期集中連載された、鳥山明による漫画が原作であり、同映画では、横嶋俊久監督がメガホンを取る。

鳥山氏による歴史的名作『ドラゴンボール』の連載が1995年に終了後、いくつかの作品を短期連載した中で最も人気の高かった作品が、23年の時を経て、この度、アニメ映画化を果たした。

まずはストーリーの概要を説明しよう。

人間の無謀な行為と天変地異により、ほとんどが砂漠となってしまった世界が舞台。その中で残った、唯一の水源を独占した国王によって、水は法外な値段で売られることになった。

この状況と世界を変えるため、初老の保安官ラオは「幻の泉」を探すため、同じく水源に困っている魔物に協力を求め、悪魔の王子・ベルゼブブと、そのお目付け役・シーフと共に旅に出ることになった。

「たとえば、この間は、夜更かしした上に、歯も磨かずに寝てやった。どーだ、かなりのワルだろ!」
「ああ…」

この悪魔の王子であるベルゼブブと、保安官である人間・ラオとの会話が予告編で流れた瞬間に、筆者は、『ドラゴンボール』初期のようなドタバタギャグ冒険活劇を予想していた。

しかし、その予想は良い意味で少し裏切られることになる。

後述するが、本作にはギャグ要素もあり、子どもが十分に楽しめる作品ではあるものの、どちらかというと大人向けのストーリーである。

鳥山明原作と聞いて、『ドラゴンボール』の悟空のような無敵な少年が主人公なんだろうなあ」と、思った方々も多いと思う。

それは、間違いではない。

しかし、それは表向きの話であり、筆者は、この物語の主人公は悪魔の王子・ベルゼブブとは異なるキャラクターであると考える。

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