緊張と緩和
原作厨としては、今作のおもしろさは「緊張」と「緩和」にあると思う。「UFOが常に東京を見張っている」という緊張と「女子高生の何でもない日常」という緩和だ。
安心して見ていると、急に軍の兵器の描写に移ったり、逆に戦闘シーンで会場が固まっているなかで、門出とおんたんの戯れが始まったりするので、最後まで飽きずに楽しめる。
今作の監督を務めたのは『PSYCHO-PASS サイコパス』(2012~)シリーズの監督などを務めた黒川智之。またシリーズ構成・脚本は『けいおん!』(2009~2011)や『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』(2018~2020)の吉田玲子である。まさに制作布陣の胆力が表れた、見事なストーリー構成だった。
また作画も素晴らしい。母艦(UFO)や対母艦用の兵器をはじめ、日常風景の細部に至るまで、CGを用いながら緻密に描かれている。今作では戦闘シーンも描かれるが、その迫力も凄まじい。これは先述した「緊張と緩和」に欠かせない要素だ。
総作画監督は、『夜は短し歩けよ乙女』(2017)で第41回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を受賞した伊東伸高。また美術監督は『ドロヘドロ』(2020)で美術監督補佐を担当した西村美香、とビジュアルに関しても実力者を揃えている。