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日常にありふれた「音楽」

© 土田世紀/日本文芸社・アニプレックス
© 土田世紀日本文芸社アニプレックス

今作で個人的に最も印象的だったものは、「音」だ。野菜を雑に切る音、歩く時の地面の砂の音、風が人に当たる音など、生活音や自然の音を強調しており、BGMが一切入っていない。

BGMが入らないことにより、人の息づかいや、声がクリアに聞こえ、俳優の生の演技を至近距離に感じることができるのだ。

音楽を担当したのは舞台音楽家・棚川寛子。日常にありふれた「音」をBGMのように使用することで、我々は気が付いた時には映画の世界に没入している。

これには静岡県舞台芸術センター芸術総監督である、宮城聰氏の協力のもと、ムービーとスピーカーに分けるという演劇様式を極めたSPECの俳優(Shizuoka performing Arts Centerの略)の演奏と共に「声や息の出演」という独自の表現を確立した棚川のこだわりが十分に感じられる。

「日常に聞き逃している音」を「聴いてもらう音楽」として見事に昇華した音響表現は、ぜひ劇場で堪能してほしいところだ。

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