エンドロールに流れるtomo the tomo の歌声はミスマッチ?〜音楽の魅力
本作のエンドロールでは、堅牢な最高裁判所の映像を背景に、女性のコーラスが流れ出す。歌っているのはtomo the tomoというボーカリストである。NHKの社会派ドラマ『ハゲタカ』でも披露された彼の歌声は、どこか荘厳で冷たく、社会派のドラマとの相性がいい。ちなみに、『静けさの中で』と銘打たれた本作のエンディングテーマは、周防の従兄弟である周防義和が作曲した曲で、裁判に負けた金子のやるせなさや悲しみをうまく表現している。
とはいえ、この音楽が最適解だったかというと疑問が残る。ドキュメンタリータッチで固い雰囲気の本作に流麗でドラマチックな女性コーラスは、ミスマッチで拍子抜けしてしまうからである(商業映画なので仕方ないにせよ、日本語の歌詞もいささか意味が過剰である)。歌詞なしのオーケストラや聖歌でも良かったのではないか。
なお、劇中ではほとんど音楽が使われないが、重要なシーンでミニマルな曲調の音楽が流れ出す。こちらの曲は、荘厳で順序だった法的手続きを連想させ、本作にぴったりである。
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