「日本では新海誠のことを誰も知らなくてショックを受けた」中国の海賊版文化が生んだ日本のアニメブーム
中国で存在感を増し続ける日本アニメ。90年代のキーワードが「テレビ」であるとしたら、インターネットが進歩・普及する2000年代以降のキーワードは「海賊版」だ。
「90年代は日本で放送されたアニメが中国に入ってくるまでに数年ほどのタイムラグがありました。しかし、2000年代以降インターネットが普及したことによって、日本で放送されたアニメにわずか1時間ほどで中国語字幕がつけられ、海賊版としてシェアされるようになりました。
現在でもそれは続いており、技術の発展によって、字幕が付くまでの時間はほんの数分にまで短縮されています。
海賊版の普及によって数多くの日本アニメが観られるようになるのですが、その中でもごく少数の作家も作品が高く評価され、ブランドを確立するようになります。そのごく少数の作家とは、押井守、細田守、そして新海誠にほかなりません」(徐昊辰氏)
2002年にフルデジタルアニメーションの短編『ほしのこえ』で商業作品デビューを果たした新海誠の作品は、初期の頃から、海賊版によって中国国内で広く観られていたという。
「私自身、初の長編作品となる『雲のむこう、約束の場所』(2004)から新海監督の作品をリアルタイムで追いはじめ、『秒速5センチメートル』(2007)で本格的に人気に火が付き、中国国内では、アニメファンであれば誰もが名を知る存在になりました。
私は2007年に初めて来日したのですが、当時、日本では新海さんのことを知っている人はほとんどおらず、ショックを受けたのをよく覚えています。というのも、当時、新海作品はミニシアターでしか上映していなかったため、新海誠は“知る人ぞ知る存在”だったのです。
しかし、中国では海賊版が普及しているので、誰でも気軽に観ることができる。これは、中国で新海誠監督の評価がいち早く進んだ要因の一つだと思います」