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『すずめの戸締り』のヒットに寄与した新海誠の中国訪問とSNS戦略

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WeiboGetty Images

目覚ましい経済発展によって拡大し続ける中国映画市場。しかし、2022年はコロナ対策の引き締めによって、映画館に足を運ぶ観客の数は激減。コロナ禍の3年間は海外との交流も途絶えた。

2023年に入ると、コロナ禍の出口が見え始め、グローバルな交流が復活。3月には『すずめの戸締り』の公開に合わせて、新海誠が中国を訪れた。

徐氏は、新海監督の中国訪問とそれに伴うSNSでの振る舞いが、興行的な成功に寄与したのではないかと分析する。

「新海監督はファンとのコミュニケーションをとても大事にしている監督です。彼は映画のキャンペーンで中国を訪れましたが、現地で出会った人との交流やホテルの様子など、『こんな風におもてなししてくれていますよ』ということを、スタッフを介さずに自分の言葉でTwitterに発信しました。

投稿はもちろん日本語ですけど、熱心なファンがすぐに翻訳し、Weibo(ウェイボー・中国最大級のSNS)に転載するたびに大バズリ。3月はほぼ毎日、「新海誠」「すずめの戸締り」がトレンド入りしていました。

そうしたことは、従来のアニメファンのみならず、ライト層が『すずめの戸締り』の存在を知り、劇場に足を運ぶ一つのきっかけになったと思われます」(徐昊辰氏)

徐氏によると、中国では映画関連の紙媒体はほぼなく、庶民が映画の情報を得る手段はSNSかレビューサイトに限られているという。さらに驚くべきことに、日本の場合とは異なり、劇場のスケジューリングもSNSやレビューサイトの評判に左右されるという。

「中国では、日本のように大きな配給会社が公開前から劇場を押さえておく、といったシステムではありません。劇場側がSNSやレビューサイトで、話題になっている作品、評判の作品をリサーチし、上映規模を決定します。

つまり、会社の大きさにかかわらず、ネットで評判の良い作品であれば、たとえ小さいアニメ会社の作品だったとしても、それなりの規模で上映される可能性がある。

封切後に口コミが良ければ上映館数が増えることもあります。ちなみに、『すずめの戸締り』の配給会社も大企業ではありません。

日本のように大きい配給会社ばかりが優遇されることがないのは良いところですが、徹底した競争主義ではあるので、多様性の担保という点では問題を含んだシステムだと思います」

海賊版文化が育んだ新海ブランドと社会的なテーマ性。さらに中国映画市場における SNSの重要性など、中国における『すずめの戸締り』のヒットの背景を考察するためには、複数の要素を考慮する必要がありそうだ。

(取材・文:山田剛志)

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