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人間が抱える不器用さを描出した
「面影」をめぐる物語

C豊田徹也/講談社 C2023「アンダーカレント」製作委員会
C豊田徹也講談社 C2023アンダーカレント製作委員会

「人をわかるって、どういうことですか?」これは、悟を捜索する探偵・山崎が、カナエにつぶやくセリフだ。一見だらしなそうな風貌から山崎を見くびっていたカナエは、想定外の言葉に思わず絶句してしまう。原作でも本作でもハイライトとなるシーンだ。

私たちは、他者と触れ合う中で、つい相手をまるごと分かったような気持ちになってしまう。しかし、人の心というのはそこまで単純なものではない。現にカナエも、悟の失踪を知り、自身が本当の悟ではなく、影しか見ていなかったことに愕然とする。

そう、本作は「面影」をめぐる物語でもある。作中でカナエは、失踪した人物の面影を追い、子供の頃の友達の面影が、彼女の人生に影を落とし続ける。また、堀もカナエにとある人物の面影を重ねる。

彼らは、まるで水面に自分の顔を映すように他者に自分の姿を重ね、求め合ったり憎しみあったりする。しかし、奥底の流れには気づけないー。

そんな誰もがかかえる不器用さが、『アンダーカレント』には描出されているのだ。

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