ホーム » 投稿 » 日本映画 » レビュー » ガチの暴力シーンが凄まじい…ラストの女の不可解な行動とは? 映画『その男、凶暴につき』徹底考察。北野武演出と音楽も解説 » Page 7

気だるく陰鬱なエリック・サティの旋律ー音楽の魅力

久米大作
久米大作Getty images

本作の音楽で最も印象深い曲が、エリック・サティによる「グノシエンヌ第1番」だろう。

もともと抒情的なピアノ曲だが、本作では音楽プロデューサーである久米大作の編曲により、打楽器の音色が印象的な曲に仕上がっている。

作中では、主人公の我妻が太鼓橋を渡るシーンで使用されており、打楽器の重たい音色と我妻のぶっきらぼうな歩調が見事にシンクロしている。

なお、本曲は、フランスの名匠ルイ・マル監督によるヌーヴェルバーグの傑作『鬼火』(1963年)でも採用されており、アルコール依存症の主人公が自殺に至るまでの時間を、気だるく陰鬱な音楽で演出している。

また、久米は、「グノシエンヌ」とは別に、ピアノを基調としたメインテーマを提供。

我妻たちが麻薬中毒者を追うシーンで延々と流れること曲は、バイオレンスなシーンにはいささかミスマッチではあるものの、鍵盤をたたくような暴力的なピアノの音と気だるくジャジーなサックスの音色で、白昼の惨劇を見事に演出している。

【関連記事】
暴力映画の極致…椎名桔平演じる水野の死因とは? 『アウトレイジ』徹底考察。北野武版”仁義なき戦い”のスゴさを解説
北野武の集大成…ラストシーンの意味とは? なぜ自決? 映画『HANA-BI』徹底考察。海外の反応と評価も深掘り解説
「やめてくださいよ」の殺人シーンがヤバすぎる…映画『ソナチネ』を徹底考察。 北野バイオレンス最高傑作、鮮烈なラストとは?

1 2 3 4 5 6 7