ホーム » 投稿 » 日本映画 » レビュー » 映画史に輝く傑作密室劇…日本版&リメイク版との違いは? 『十二人の怒れる男』徹底考察。陪審員を描き分ける演出と名言も解説 » Page 5

個性豊かな12人の名もなき市民たちー配役の魅力

映画『十二人の怒れる男』主演のヘンリー・フォンダ【Getty Images】
映画十二人の怒れる男主演のヘンリーフォンダGetty Images

あらすじからも分かる通り、本作の登場人物たちは名前で呼ばれることはなく、「陪審員⚪︎番」という番号で呼ばれる。とはいえ、番号で呼ばれているからといって、彼らが没個性であるということはない。

会議では、議長を務める陪審員1番を中心に、12人の陪審員がテーブルをぐるりと囲む。また、彼らの顔つきもキャラクターと結び付けられており、個性がより際立っている。

とはいえ、配役としては、一応の主演である陪審員8番役のヘンリー・フォンダに触れなければならないだろう。穏やかな口調と澄んだ眼差しで理路整然と矛盾点を指摘していくさまは、「アメリカの良心」そのものを体現しているように思える。

一方、被疑者と息子を重ね合わせ、陪審員8番に真っ向から対立するのが、リー・J・コッブ演じる陪審員3番だ。ギャング映画などではお馴染みの名優であるコッブだけに、腕っぷしの強そうな3番は適役といえるだろう。

また、有罪派の「最後の砦」である陪審員4番役のE.G.マーシャルも、印象深い演技を見せている。議論をしていても一切汗をかかず、8番の意見を冷静に論駁していく4番。そんな彼か最後の最後に論駁され、思わずハンカチで額の汗を拭う演出には、思わず唸ってしまうこと請け合いだ。

1 2 3 4 5 6 7