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パンチドランク・ラブ 脚本の魅力

“強烈な一目惚れ”を意味するタイトルが示すとおり、物語の大枠は、主人公・バリーとヒロインのリナが出会い、結ばれる典型的なラブストーリーである。

一方、《演出》の項目でも述べたとおり、通常のラブコメ映画の枠には収まらない部分も目立つため、敬遠する人がいてもおかしくない。気の強い姉に囲まれて育ったバリーは女性全般に対して苦手意識を持っており、時に自分の感情がコントロールできなくなる。男性であれば共感できるポイントは多いだろう。

しかし、突発的に暴力行動を起こしたり、迂闊にテレフォンセックスサービスを利用して業者にゆすられるなど、バリーの人物像は王道ラブコメの主人公が体現する「男らしさ」や「愛嬌」に欠け、痛々しく神経症的で、観ていて心配になるほどだ。

かたや、ヒロインのリナは、奥手なバリーにキスを懇願するなど、恋愛に対して積極的な女性として描かれている。それまでの作品同様PTAが単独で執筆したシナリオは、男性の願望が強く反映されており、その分女性の共感を得にくいものとなっている。

ラブコメ映画として観ればウィークポイントが目立つものの、7人の姉にからかわれてプッツンした挙句、義兄である医師に慰められるシーンはもの悲しくも笑え、クーポン集めを趣味とする主人公のキャラ設定は斬新である。

また、バリーとリナの恋物語、ゆすり屋との対決、クーポン集めの3つのエピソードを並行的に描き、途中でそれぞれの線を交わらせる展開はよく出来ており、決しておざなりな脚本ではない。

ちなみに、大量のプリンを買い込んで特典のマイレージをため込むエピソードは実話を基にしている。

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