ライダーとスザンナ、二人の自画像〜演出の魅力
本作は、スザンナ・ケイセンによる自伝『思春期病棟の少女たち』(1994年)を原作に、精神科での少女たちの触れ合いを描いた青春伝記映画。監督は『アイデンティティー』(2003年)のジェームズ・マンゴールド。主演のスザンナ役を『シザーハンズ』(1990年)のウィノナ・ライダー、リサ役をアンジェリーナ・ジョリーが務める。
精神病院をテーマとしていることから、ミロス・フォアマン監督の『カッコーの巣の上で』(1975年)と比較されることの多い本作だが、原作小説がノンフィクションである点で大きな違いがある。そのため、本作の精神病院の患者の描写は、かなり真に迫ったものになっている。
なお、主演のライダーは、幼い頃に境界性パーソナリティー障害で精神科に入院しており、本作の制作も、彼女がスザンナの原作に惚れ込み、映画化権を購入したことがきっかけになっている。自ら製作総指揮を担当し、脚本も自ら担当した。インタビューでは、原作に登場する知的で面白いスザンナへの憧れについて述べているライダー。本作は、スザンナ・ケイセンの自伝であるとともに、ウィノナ・ライダーの自伝でもあるのだ。
なお、本作の原題『Girl, interrupted』は、フェルメールの絵画《Girl Interrupted atHer Music(中断された音楽の稽古)》という作品がモデルとなっており、本来であれば『中断された少女』が邦訳として正解だった。これが『17歳のカルテ』というタイトルになった理由は、日本公開当時、マスコミが「キレる17歳」をフィーチャーしていたからだという説がある。このあたりのタイトルは、安易だと言わざるを得ないだろう。