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新たなサスペンス演出

② 信じる者たちへの懐疑

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この「信じること」を相対化する姿勢は、近年のドラマ『サーヴァント』あたりから顕著になりつつある傾向といえる。

詳細は伏せるが、はじめは出自のはっきりしない人物として登場した同ドラマの主人公であるターナー家の子守リアンは、ある時点で猟奇的な儀式を行うカルト教団の脱会者であったことが明らかになる。

シーズンが進むにつれ、物語はリアンと教団の対決構図に焦点を当てていくが、そのなかでリアンもまた近隣に住むホームレスたちから崇められ、ある種のカルト的な集団を組織していくこととなる。

これら直接的にカルトに関連した要素に加えて、そもそもこのドラマでは、作品全体の中核を成す赤ん坊と人形の入れ替えという設定をめぐっても、「信じること」の価値がシビアに問い直され続ける。『ノック』の全米公開とほぼ同時に無事完結したこのドラマでの新たな試みは、間違いなく本作にも影響を与えている。

ではシャマランはなぜ、近年自らにも重なるような「信じる者たち」に向けられる懐疑を誇張して描くようになったのか。その背景を整理してみよう。

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