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“夢の工場”のダークサイドを描いた超難解作〜演出の魅力

デイヴィッド・リンチ監督(第70回カンヌ国際映画祭より)
デイヴィッドリンチ監督第70回カンヌ国際映画祭よりGetty Images

本作は、2001年に公開されたアメリカ映画。監督は、『イレイザーヘッド』(1976年)『ロスト・ハイウェイ』(1997年)で知られるデイヴィッド・リンチで、主演はナオミ・ワッツとローラ・ハリング。第54回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞したほか、英BBCの「21世紀最高の映画100本」では1位を獲得するなど、名作としての評価を不動のものにしている。

表題の「マルホランド・ドライブ」は、夢の工場ハリウッドに実在する峠道で、走り屋たちの聖地にもなっている場所。本作では、この場所を軸に「ハリウッドのダークサイド」が描かれている。

例えば冒頭の交通事故のシーンでは、負傷した謎の美女リタがハリウッド近郊の「サンセット大通り」を歩き回り、大女優ルースの家に迷い込む。この導入は、ビリー・ワイルダーの往年の名作『サンセット大通り』のオマージュだ。

とはいえ、そこは“カルトの帝王”デイヴィッド・リンチ。単なる“内幕モノ”ではなく、登場人物の現実と夢、回想が脈絡なく複雑に錯綜する難解な作品に仕上がっており、脚本自体も複数の解釈を容認する筋になっている。

なお、本作はもともと、リンチがテレビシリーズとしてテレビ局に企画提出したもの。パイロット版のあまりの過激さにテレビ局側が却下し、お蔵入りの危機に瀕していたが、フランスの配給会社が出資し、映画化が決定されたという。

過去には『ツイン・ピークス』でテレビ業界にも進出しているリンチ。もし本作がテレビドラマ化していたら…と思いを巡らせるのもまた一興だろう。

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