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見えるものと見えないもの~映像の魅力

映画『裏窓』のスチール写真。(右から)ジェームズ・スチュアート、グレース・ケリー
映画裏窓のスチール写真右からジェームズスチュアートグレースケリーGetty Images

前章でも触れたように、本作の主人公ジェフは、まるで映画を見るように裏窓を眺めている。

例えば、犬の死体が見つかったことから、男が花壇の下に妻の死体を隠したと推測するシーンでは、数週間前の花壇の写真を持ち出し、花の種類が変わっているとリザに伝える。

このシーンは、映画を一時停止して巻戻し、映像の中に映った手掛かりを探し出そうとする観客になぞらえることができる。

また、男の部屋でリザと男がもみ合うシーンでは、男がリザを窓枠の間に押しのけたり、明かりを消して部屋を真っ暗にしたりする。このとき、ジェフや本作の観客は、リザと男の間で何が起きているか想像で埋めるしかなくなる。

つまり、ジェフの視野と観客の視野を同一にし、感情を共有させることで、リアリティを高めているのだ。

この演出の最たるものが、照明を落としたジェフの部屋に男が訪れるシーンだろう。月明かりが一瞬男の顔を照らした後、闇の中で対峙するジェフと男の姿は、観客の緊張感を存分に煽る。ヒッチコックの技巧が光る何とも小憎らしいカットだ。

なお、本作の舞台はすべてセット。グリニッジ・ビレッジの街並みを参考に、50人の作業員が6週間かけて作り上げたという。ヒッチコックの映画製作への並々ならぬ執念が感じられるエピソードだ。

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