『時計じかけのオレンジ』 【ネタバレあり】あらすじ
天から罰が下ったのか、アレックスは警察官や更生委員の大人たちから、手ひどく痛めつけられる。裁判が行われ、懲役14年の刑に処されると、生まれ変わったような真面目さを発揮し、模範囚として過ごした。
収監されてから2年が経った頃、アレックスは「ルドヴィコ式心理療法」という新しい治療を受けることによって刑期が短くできることを知り、我先にと言わんばかりに志願。晴れて被験者となり、専用の刑務所に移送されることが決まった。
「ルドヴィコ式心理療法」の内容は過酷極まるものである。アレックスは薬を飲まされた上で椅子に拘束され、特殊なクリップでまぶたをロックされると、思わず目を背けたくなるような残虐映像を延々と観させられる。BGMはアレックスのお気に入りの一曲、ベートーヴェンの「交響曲第9番」だ。
「ルドヴィコ式心理療法」によって、アレックスは暴力や性行為を本能的に避けるようになり、「交響曲第9番」を聴くと吐き気を催すカラダとなった。
治療の効果を確かめるために、とある舞台が用意される。アレックスは何も知らずに壇上に立つと、見知らぬ男に殴られてしまう。しかし、やり返そうにも身体に力が入らない。続けて、裸の女性が目の前に現れると、興奮するどころか苦痛に歪んだ表情を見せ、うずくまってしまう。
観客席にいる政府関係者たちは、「ルドヴィコ式心理療法」の見事な成果に拍手を送る。こうしてアレックスは治療によって骨抜きにされ、出所が決まった。教誨士の男は、アレックスが「意志によって暴力を放棄した」のではなく、外から力を加えることによって「暴力衝動が抑圧されただけ」であると語り、「真の更生にはならない」と嘆く。
帰宅したアレックスだったが、両親はすでに彼を見捨てており、部屋にはアレックスと風貌のよく似た青年が住んでいた。仕方なく家を飛び出すと、川辺でホームレスと遭遇。奇しくもそれはかつて暴行を働いた相手であった。アレックスはあっという間にホームレスの集団に囲まれ、暴行を受ける。
しばらしくして警官2名が助けに来るが、彼らは元・ドルーグのメンバーである。警官となった元少年たちは、アレックスを警棒で滅多打ちにし、その場を去る。ボロボロになったアレックスは、這う這うの体で一軒の住宅にたどり着いた。
そこはかつてアレックスが強盗に押し入った家である。アレックスから受けた暴力によって下半身不随となった主人は、目の前の青年がアレックスであると気づいておらず、親切に介抱する。アレックスが受けた「ルドヴィコ式心理療法」はロンドン中で話題になっており、主人はそれに反対の立場であった。
アレックスはすっかり安心し、風呂場で「雨に唄えば」を口ずさむ。すると、それを聴いた主人の記憶はフラッシュバック。青年がかつての暴行犯であると理解し、憎悪をたぎらせる。
主人はアレックスの食事に薬を混ぜて意識を奪うと、狭い部屋に監禁。「交響曲第9番」を大音量で流すと、アレックスは身を激しくよじらせて苦しみ、苦痛から逃れるために窓から飛び降りる。主人はアレックスを自殺に追い込むことによって復讐を遂げるとともに、「ルドヴィコ式心理療法」の失敗を世間に知らしめる魂胆であった。
一命を取り留めたアレックスは病室で目覚める。「ルドヴィコ式心理療法」の失敗によって、政府の支持率は急降下。政府関係者は病床のアレックスを見舞うと、「もう一度ステージに立って、治療の効果を見せてほしい」と懇願する。
アレックスは快諾し、両者は報道陣のカメラの前で手を握り、満面の笑顔を向ける。その場は「交響曲第9番」が大音量で流れているが、アレックスに苦痛の色は見えない。
治療効果が解け、かつての暴力衝動と性衝動を取り戻したアレックスは、妄想の中で女性と思う存分セックスを楽しみ、恍惚の表情を浮かべるのだった。