完璧なキャストを率いるアンドリュー・スコット
本作は合計4人という少人数のキャストで物語が進められるが、中でも重要な役割となるのは、アダムを支えるハリーだ。
ハリーが寄り添うアダムから滲み出る弱さや大切にされたいという願望は、視聴者とアダムが同じことを同時に感じられるように繊細に映し出されている。ハリーは、アダムを大切にし、アダムが愛されていることを思い出させるような存在だが、そんなハリーの心にも明らかに傷がある。
作中でもがくアダムに好意を寄せるハリーは、過去の出来事に苦しんでいるのは、アダムだけではなく、他の多くの人々も全く同じということを思い起こさせる。
クレア・フォイはアダムの母親を演じており、同性愛嫌悪の影や固定観念の奥にも、息子に対する愛があることを巧みに表現。ジェイミー・ベルは情緒不安定な父親の姿を上手く演じている。
映画『異人たち』は、悲しみがどのように人間の人生の一部となるかを真正面から描く、静かだが激しい映画だ。個人がどんなに孤独に苦しんでいたとしても、それは、自分だけじゃない、他の大勢の人たちも同様に抱えている孤独があると、誰もが共鳴できる。
映画『異人たち』はあなたの心を癒し、そして傷つけ、痛みと癒しの痕跡を残すことだろう。
映画『異人たち』は、日本では2024年4月19日(金)より劇場公開される。
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