ノーランVSスコセッシ。栄冠を手にするのは?
★監督賞ノミネート
『落下の解剖学』ジュスティーヌ・トリエ
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』マーティン・スコセッシ
『オッペンハイマー』クリストファー・ノーラン
『哀れなるものたち』ヨルゴス・ランティモス
『関心領域』ジョナサン・グレイザー
映画『インセプション』や、映画『TENET テネット』などの話題作を世に生み出すクリストファー・ノーランだが、彼が監督賞にノミネートされたのは1度しかない(映画『ダンケルク』)。また受賞は意外なことにも1度もない。そんなノーランとは対照的に、映画『タクシードライバー』や、映画『グッドフェローズ』のマーティン・スコセッシは、これまでに9回もノミネートを果たしているが、受賞はなんと1度のみとなっている(映画『ディパーテッド』)。
上記の結果がこの監督賞受賞2大候補者の間にある隔たりを表している。とは言っても、スコセッシは一度『ディパーテッド』で監督賞を受賞している。今回『オッペンハイマー』は、主演女優賞と歌曲賞にノミネート対象がなく、視覚効果賞はショートリスト入りを果たしていないことを踏まえれば、ノミネート可能な部門全てにその名を連ねるという驚異的な記録を叩き出した作品だ。
ちなみにアカデミー賞の最多ノミネート記録は映画『イヴの総て』(1950)と、映画『タイタニック』(1997)、映画『ラ・ラ・ランド』(2016)の14ノミネートである(『イヴの総て』12部門、『ラ・ラ・ランド』13部門)。13部門でノミネートした作品はこれまでに10作品で、『オッペンハイマー』は11作品目となる。
今回アカデミー会員はこの名誉を考慮し、一度監督賞受賞を果たしたスコセッシではなく、数多くの偉大な作品を製作してきたにも関わらず一度も同賞を受賞していないノーランに『オッペンハイマー』の監督としてではなく、今まで製作してきた全作品の評価として、この目覚ましい記録を遂げた『オッペンハイマー』を代表し監督賞を授ける可能性が非常に高いだろう。
今回の監督賞には、『バービー』のグレタ・ガーウィグのような物議を醸す落選者もいる。しかし他にも素晴らしい監督がたくさんノミネートされている。注目すべきは『哀れなるものたち』のヨルゴス・ランティモスだ。彼はスコセッシ、ノーランと並び、第76回米監督組合(DGA)賞にノミネートされているため彼は監督賞の3大候補者と呼べるだろう。
また、ジョナサン・グレイザーは『関心領域』で力強い仕事を見せ、ジュスティーヌ・トリエットは『落下の解剖学』でノミネートされている。彼らのノミネートに異論はない。しかし今回ばかりは監督賞はノーランの手に授けられる可能性が高いだろう。